声優名
綺音
[
声優詳細情報
]
価格
2160円
文字数
8056文字
サイズ
23273.2 KB
公開日
2023年2月7日
声のタイプ
【NEW!】天然女子
ファイル形式
mp3
売れ行き
この作品の販売回数 :
0回
作品内容
「日暮丸自刃/山中久美子」の切腹シーンの朗読音声です。
台詞
日暮丸自刃
山中久美子
呻吟は潔さの証拠
高まり行く緊張感は今や耐え難いほどで、すべての視線は梨江の張り切った下腹部と、今まさに突き立てられようとする短刀の上に、集まります。
悩ましげに荒立つ吐息を押え、大きく息を詰めた梨江は、キラッと陽光をはねた短刀……ぶすッッ、こもった響き、「うむッ!」一瞬、唇をつくうめき。
ああ、ついに梨江は、短刀を腹に突き立てたのです。力任せに刺した刃の輝きは完全に腹中に没し、拳が下腹にじかに当たっています。
前のめりに全身を硬直させた梨江。刀の周囲にむっくりと沸き上がった血潮が妖しい美しさで光り輝きつつ、うねうねと肌を伝い袴に吸われていきます。
黒髪が肩で波打ち、息整えるや力一杯右へ引き回そうというのです。
当時の切腹では、腹切りつつの絶叫や呻吟はむしろ潔い切腹とさえいわれていたくらいで、梨江も苦痛の声を隠そうともしなかったのです。
「うッ、うッッ……うッ……むッ!」
気合いに似た呻きが唇をつき、左脇の短刀を力いっぱい右へ引き付けるのです。弾力ある肌は、その努力をしりぞけ、ごくわずか位置を変えた刃の周囲から、いっそう激しく血をふくのみだったのです。
最初から、この短刀ではとうてい当たり前には引き回せないと悟っていた梨江、うなずくと、腹中深く差し込まれた刃に力をこめつつ、小刻みに上下に煽り立てたのです。
一瞬、ぐいっと持ち上げられたかに見えた肌は、ぶりっと音をたてて切り裂かれます、ぱっくりと口を開けた傷口から、どっと血潮が吹き出されます。
「あツ!うーん、うむッ、き、きれる!こ、こうして……うむッ!」
いかに切れない短刀でも、ノコギリで引くように掻き切られて、なんでたまりましょう。
「うむッ、あッ!うむッッ、むーッ!何のこれしき、き、切るッ、もう一寸ッ……も、もっと……」
たちまち二寸あまりを引き切り、傷口からどっと吐き出され血潮が、袴に散りしぶきます。
「なんのッ!もっと、うむッ、こ、こうして、ま、まだッ」
激痛に全身を硬直させつつも、気丈に短刀を煽り続ける凄烈さに、一同目を外すことができず、食い入るように梨江の手もとに見入るのです。
「なんのッ!もっと、も、もっと、あッ、うーひッ」
ぶりッ、ぶりッ、と音をたてて断ち切られる腹、上下する刃が血潮の中でギラギラと輝きます。
「あッ!なんの!え、い、こ、これしき、なんのッ……もっと、うむッ!三寸……ま、まだ、まだ、た、たらぬ、左、右、右まで潔く、うむッ、ううッッ……」
「うッ!ううッッ、うむッ……ま、まだ……半ば……なんの、こ、これしき、も、もう一度、こうして、うむッ!」
梨江の引き締まった腹は、美しくたてに通っている正中線のあたりまですでに切り裂かれ、ジグザグはぜかえった傷口いっぱいに、生生しい黄色い脂肪が房になってはみ出ているさまは、まさに忍者の最期に相応しい潔さでした。
しかし、いかに武芸に秀でているとはいっても、しょせん若い女性の身で、しかもまったく切れない短刀でわが腹を掻っ捌く苦しみは、どんなにか耐えがたいものなのでしょう。
「うむッ!なんの、に、忍者……忍者の、は、腹切りは、こ、このように、うむッ!もっと、ま、まだッ、た、たらぬ!……」
赤い唇を荒い息と共に漏れる叫びが、それを示しているようです。
正中線まで掻っ捌いた刃をとめると、大きく肩で息をつく梨江、息を整えると、酔った表情も悩ましく、空を見据えると再び切腹に挑みます。
「うむッ!なんの、え、いッ、なんの、ま、まだ、五寸は引き這わさねば!……まだッ……も、もっと!」
右手に短刀をしゃくりつつ、ぶりッ、ぶりッと、一かき、腹を掻き切るのです。
最後の二寸に挑む
苦痛に引き攣った顔を仰向かせ、全身を戦慄かせる梨江の美しさは抜群です。そして次第に動きがにぶる刃に、我と我が身を励ましつつ、最後の二寸ほどにいどみます。
「なんの!さ、さいごの……二寸、え、いこれしき、うむッ!く、くッ……耐えて!も、もう一度、あーッ!むッ……」
最後の二寸を身もだえしつつ掻き切った梨江。その張りのある下腹部にはじける傷口、袴は紅をぶちまけたように色どられ、座した彼女の周辺から彩りも生々しく染め上げられます。白布の白さと血潮の彩りの鮮烈な対照。
右腹深く短刀を突き刺したまま、
「こ、これが、忍者、梨江の、ままことの腹切り、い、いざ、無、無念の、は、はらわたご、ご覧下され」と言うや、左手に押さえていたはらわたを握り締めたままに「うむーッ、うッ」力いっぱい引き出したのです。
たった数刻前まで、あの梨江の美しく引き締まった腹奥く秘められていた秘密を、初夏の日差しの下で衆目(しゅうもく)に悉く曝け出したことを喜ぶように蠢きつつ、膝から滑り落ちつつ、ぬめぬめと光のたうつのでした。
「ただいま、切、切腹、つつかまつりました。いざ、ご、ご検視くだくださりませ」
と言い切りました。家臣は一同、声も出ないありさまです。
しかし影孝は、自分の企みが悉く失敗に帰したのを、唇を噛んで認めなければならなかったのです。わざと肌も露わな薄物を与え、介錯もつけさせず、しかもひどい鈍ら与えて梨江が腹に短刀を刺したものの引き回しかねてのたうち回り、取り乱した悩ましい姿態を想像していたのが、見事にはずれたばかりか、りっぱに一文字腹切り終えて毅然として検視を待っているのです。
この影孝の敗北に加うるに、さらに美しい梨江を苦しみのたうち回らせたい残忍な欲望がむらむらと頭をもたげるのでした。血走った目を輝かせつつ、ゆがんだ唇から上ずったこえが吐き出されます。
「はッはッは。みごとじゃのう。なにがそれしきの切腹、我が国では娘子供にもいとやすきこと。それしきの腹切りが、忍者日暮丸の腹切りとは、いや笑止の限りじゃ、わっはッはッ……」
すでに力を尽くして腹切り終えた梨江に浴びせる嘲笑を、苦しい息の下で唇を噛んで耐えるのでした。
「か、影孝……殿には、梨、梨江のセップクご不満のよし、し、しからば……ご、ごらんくだ、くださりませ……」
と叫ぶと、血みどろの短刀を右腹から抜き取り、握り直すと、鳩尾に刃を下向けに構え、諸手で力込めると、
「うむッ!」ざっくと突き立てたのです。
「ご、ごらん、くださりませ。こ、この刃を……」
全身を引き攣らせ、伸び上がるようにしつつ正中線に沿って下へ掻き切るのです。
彫りの深い、少年のような美しい顔をさすがに激痛に引き攣らせ、叫ぶように、
「なんのッ!忍者、忍者の切腹……ええッ……うむーッ、な、なんのこれしき……」
すでに肌衣は肩から滑り落ち、胸のふくらみが苦痛に引き締められつつ堅い乳房をふるわせて喘ぐさまは、凄絶にも甘美な妖艶な光景でした。
腰元の諫言切腹
苦痛か恍惚か高まり切った感情をたたえた梨江の表情を全身をわななかせて見守る腰元たちのなかに、女でなければわからぬ、ある激情を秘めた輝きがありました。
「にょ、女体なれど……こ、これしきのセ、セップク、何程のことが……将、将軍家に、弓引く心より、はるかに軽い……く、苦しみ……うむッ!ま、まことに、い、潔き者は、これしきの切腹、何程のことが、ご、ございましょう……将軍家に弓引かるるとあっては、ご当家にま、まことに潔き者の出る道理はごござりませぬ……こ、これより日暮丸、い、いかに息引き取るか、とくと、ご、ごらんあれ……」
と、苦痛に耐えて言う梨江に、ますますその憤りの炎に油を注がれた影孝、
「しからば、いたしかたなき仕儀、ただいま切腹つかまつりまする。お手数おかけ申すも恐れ入りまするゆえに、このまま失礼つかまつりまする」
苦悶しつつ、血の海でコトの次第をうかがい耐え続ける梨江のかたわらに手早く切腹の準備がととのいます。準備に当たっている侍に目配せすると、
「それにてじゅうぶんにござりまする。なお妙とても武士の娘、切腹いたすうえは、なにとぞ、介錯ご無用にお願い申しまする。ごめんくださりませ」
家臣に一礼すると、しとやかな身ぶりで段を下り、白たびのまま敷き砂利を踏んで切腹の場に足を運びます。その上品な容姿にはおかしがたい覚悟を感じるのでした。
裾を整えて白布に正座した妙は、まず血の海で苦悶する梨江に向かい一礼すると「梨江様、潔きご切腹、妙は心よりうらやましく存じまする。ただいまより、ふつつかでござりまするが、梨江のお覚悟をお手本に切腹つかまつります。なにとぞ、お見届けくださりませ」
さすがに高ぶりを隠し切れない、やや上ずった声で言うのでした。
「お、おことばいたみいります。なにとぞ、お心やすくご生害を……」
あまりのことにぼうぜんとしている一同の前で、妙はふところから懐剣を取り出すと、ぱっと鞘をはらい、なにごとかと見守る人々の前で、帯の間にさしいれたと見るや、こじるようにブツッとばかり断ち切ってしまったのです。
バッタと落ちた帯をかたわらに取り除けると、矢がすりの前を搔き退け、扱きをゆるめると、そのまま低目に押し下げて、キュッときつくしめなおします。それから、真っ白い長襦袢を搔き退け、腰紐もぶつぶつ短刀で断ち切ってしまったのです。
そして、一瞬のためらいの後、肩を窄めると、諸手を懐に取ると、さっと諸肌を押し抜いたのでした。
むせかえる若さ
真っ白な裸身が陽光の下に眩しいばかりに輝くのを見た一同の間から、どっと、声にならない響めきがわき上がりました。それもそのはずです。当時、若い娘が白日のもとで、しかも衆目の前に肌をさらすことなぞたえてなかったからでした。
家臣の驚きと好奇の瞳はいやがうえにも妙の裸体に注がれたのでした。梨江のそれとまったく異なった美しさを、妙の裸身は示してくれたのです。それは、あくまでも女らしい恥じらいと艶めかしさに溢れていたのです。白い肌が紅をはいたように染まり、はじらいに思わず左手を曲げて胸のふくらみをおおい隠す仕草といい、そのために開いた脇から鮮烈な黒さを見せる脇毛といい、若い処女の艶めかしさを感じさせないものはなかったのです。
紅をはいた白肌はきめ細やかにあぶらぎってつややかに張り詰めて、あくまでふくよかでした。丸いなだらかな肩、大きくびんと張った胸には上品な小ぶりの乳首が桜色に息づき、流れるようにこんもりと盛り上がった下腹部はほんとうに豊かでした。
上品な面長の美貌に似つかわしい裸身は、豊満で、華やかで、肉感的で、むせかえるような女らしさを漂わせる中に、清純さが入り混じった、言うに言えない美しさが、一同の心をとらえてしまったのでした。
痛々しい思い、好奇、若干の好色の複雑な感情がねばりつくように自分に注がれているのを、頬を赤らめつつもさけようとせず、赤い唇をきりった引き締めると、腹の曲線を隠すように、乱れている肌着をぐっと腰骨の下に押し下げ、そのふくよかな下腹部をますところなくあらわにしたのです。わずかにのぞく真紅の蹴出しが、白肌にいっそう映えるのでした。
あえて膝を縛ろうとしないのは、その激しく強い覚悟を忍ばせていました。
懐剣に懐紙をきつく巻き、右手に構えると、左指にその感じやすい下腹をゆっくりと押し揉んでいくのです。
豊満ながらどこか成熟し切らない乙女らしいところを感じさせる裸身と、美貌からただようなまめかしさと、今まさに腹切ろうとする決然としたおおしさとが、混然となって妖しい美しさを最高に高めています。
妙のしぐさを、肩で息つきつつ、見守る血みどろの梨江の頬に、苦痛以外の激しいものが走ります。しなやかな身ぶりで刃を左腹に構えた時、一度息をのみ、じっと妙の動作に引き付けられていました。
キラッ……陽光をはじいた刃は、ついに、この処女の若々しい腹へ……「アッッ!」鋭いうめきで赤い唇をつきます。
諸手を刃に中空を見据えたまま中腰に伸び上がりつつ、きりきりと右へ引き回し始めたのです。
「アッ……アアア……アッ……アーッ……アア」
張りのある若々しい呻きが、愛らしい唇から洩れ、血潮がたらたらと膝に溢れ、白磁の肌を鮮やかに彩ります。
「アッ……アアアア……ア……アア……」
意志どおりにゆっくり、しかし確実に刃をはこび下腹を右に切り裂く妙、あの美しい女らしい妙のどこに、こんな激しい気力がひめられていたのでしょうか。
力をこめるあまり、懐剣の柄がぶるぶるとふるえ、その豊満な裸身が悩ましく波打ち、一気に右へと焦るのでしょう。
「アッ、アッ……アア」
次第にのびる真っ赤な筋が下腹を横切ってのびていくにつれ、高まる苦痛。
「アッ……ウム……ア、あさい…ナ、ならぬ……」
“啊……呜嘸……啊、太浅了……不行……”
深く腹に食い入った刃が、はらわたにからまり、その弾力にやわらかく押され、次第に浅く抜けてくる刃を左手で押さえ込みつつ腰をよじってもだえるのでした。
「な、ならぬ、あさい……こ、こうして……アッ……」
じりじりと右へ進む刃は、すでに下腹の半ばを過ぎています。
「ああ、もっと……アア……」
アア悩ましい表情を中空にすえたこの美貌の乙女は、なおも、わが腹を切り裂き続けます。
「アーッ、モ、モット、アッ……ツ……」
若々しい悲痛な叫び、刃が腸に切り込んだのでしょうか、硬直した全身が苦痛に耐えて、わなわなとふるえるせつなさ。
「アッ、アッ、もっと右へ、もっと、アア……も、もう少し……もう少し……こ、こうして……」
伸び上がりつつ尚残る三寸ほどに挑みます。豊満な脂肪の乗り切った女性の下腹部を切り裂くのは容易ではありません。まして十七歳の乙女としての妙には、最後の三寸は、切り裂くにはどれほどつらいことでしょう。悩ましく腰を波打たせ、あせり気味に諸手に力をこめるのですが、刃は思うように進まないのです。
女二人の励まし合い
妙は、今や彼女の正面で苦悶しつつ彼女の最期を見守る梨江の切り裂かれた腹部に燃えるような瞳をむけて、自らの腹を掻っ捌くのです。
「ああ、り、梨江殿の、い、潔さには、お、よびませぬ……ああ、妙は……ふつつかに……ざ、残念でござりまする……あッ!ウムーッ」
「お見事な切腹……梨江は……感服いたしました」
「か、かたじけのう存じます……ああ、ま、まだ、こ、こうして、アッ、アーッ」
仰け反りつつ、最後の一寸を切り終えた妙、
「た、妙は、女ながら……いざ、この刃のいくえをご覧くださりませ……アッ!ウームッ」
若々しくうめくと、右下腹をぐりっと一えぐり、かぎなりに切り上げようと、いうのです。
「なんの、お、女ながら、切腹を……こ、こうして……なんの、アッ……アアアア……ッ……」
脂汗を浮かべ、張りのある呻きが、唇をつきますが、苦痛の激しさを物語るようにわななく裸身、刃が彼女の意志どおりに進まないもどかしさに悶えるのです。豊かな胸の膨らみが切なく喘ぐような、正視できないほどの痛々しさと、しかしあまりにも艶めかしく美しいものでした、抜けるように白い顔に脂汗が煌めきます。
もだえにもだえ、じりじりと切り上げる妙、三寸ほども切り上げた時、浅く浮き出した刃を、かくてはならじともろ手でぐっと押さえ込んだのです。
激しく腹中に押し込まれた刃がはらわたを貫いたのでしょう、全身を走る激痛に我を忘れて「アーッ!キエーッ」と鋭く叫び、仰け反るはずみに、わずかに切れ残っていた肉が吹っ切れ、がばっと傷口が大きくはじけたのです。
「ああ……されど、つ、ついに妙は、武士の切腹、うれしゅう、ご、ぞりまする……あ……ムム……ああ、せ、せつない」
壮絶の美花二輪
すでに二人の娘が腹掻っ捌いた庭先には血の香が立ち籠め、血の海にうごめく壮絶なありさまは、美しくもあり、その惨状は目をおおうものでもありました。
血の気の失せた顔を上げた妙は、その物凄いばかりに白い美貌を引き攣らせつつ影孝に、最後の言葉を尽くして諫めるのでした。
「た、妙、ただいま、切腹つかまつりました。取り乱しました、ふ、ふつつかな切、切腹ながら、ご笑覧くださりませ……つきましては、なにとぞ、お殿様、お心を……お改心をお願い申しまする」
「たわけ、よく聞くがいいわ、女だてらに切腹なぞと申しおって、その始末じゃ。せいぜい苦しむがいいわ……苦しむのじゃ」
さすがにあまりの凄絶さと血の香に鼻白んだ影孝は立ち上がると、
「ええい、たわけ、苦しめ、せいぜい悶絶するのじゃ」
そのほうども最後まで見届けい、と吐き捨てるように言うと、奥に去っていきます。
「お殿様!」
血を吐くような妙のことばも聞かばこそ、「ああ、妙は、む、無念にご、こざいまする……」
最後のことばに振り返りもせず去っていく影孝。
「た、妙殿、お見事な切腹……梨江、か、感服つ、つかまつりました……い、いざ、ともに潔う、ム……無念腹を……」
「は、はい、こ、こころえました」
「い、いざ、ともに、思いのか、かぎり、掻き切りましょうぞ……」
「も、もとよりのぞむところにござり……まする」
「い、いざ」
「こ、ころえまました!」
一気にぶつっりと断ち切ったのです。
全身で苦痛に耐える二人。しかし、すでに気力の極度が迫っているのです。若い女性の身で腹掻き切ったうえ腸までもずたずたに断ち切った気力、しかし、すでに気力の尽きる気配を感じるのです。
「た、妙殿……こ、このままにては苦悶のあまり、不、不覚を取りましょうぞ……ご、ごらん、ください、梨江の最後の切腹……うむーッ」
必死で膝を立て、よろめく足で立ち上がろうとする梨江、二度三度しくじり、歯を食いしばり、ついに立ち上がった梨江は、
「お、女……女……ながら……忍者の最後は、こ、こうして」
ずり落ちた袴をなお下腹いっぱいに押し下げ、ぶっつと突っ込んだのです。これを見た妙は、
「た、妙も、お、おあとお」
伸び上がると、これも下腹いっばいを現し、短刀を深々と突き立てたのです。
「アーッ……く……くるしいッ、妙はここうしてセップクするのを……あ……憧れておりましたッ……男に生まれ、心ゆくまで腹切りとう存じました……ああ、つ、ついにうれしい、うれしゅうございまする、妙は……うれしい」
脂汗を浮かべて、絶え絶えに告白する妙。
「梨江も、本懐。は、腹切るは……本懐。うむーッ……」
最後の刃を抉り続ける二人、すでに気力のぎりぎりの限度でのたうちたい衝動を、下腹深く貫いた刃がやっとささえてくれているのです。もつれるようにくりかえされる悲痛な呻き。
美しい二人がよく激痛に耐え、取り乱すまいと気力の限りをつくすさまに、人々は正視に耐えぬ思いでした。
「た、妙は、も、もはや力尽き……ああ、気力が……」
血みどろの左手でそのふくよかな胸のふくらみをしっかととらえ、のけぞりつつあえぐのです。すそが大きく乱れ、白い太ももが真紅の蹴出したからむのをなお必死につくろいつつも、すでに指がこわばり、気力がつきている様子。
それでも最後の気力をこめた刃が、ついに妙の女らしい臓腑を深く貫き、太い動脈を切ったのでしょう。どっとあふれる血潮があたりに飛び散ります。
「アッ、キエーッ」と絶叫し、前のめりに崩れかかる上体を一度は左手でささえたかに見えましたが、それも一時、そのまま血の海にずるずるとくずれ伏したのです。
妙の最期を見届けた梨江の腹は、すでに黄色い脂肪に縁取られ、大きく笑み割れた空胴から、がばがばと血を吐き続ける無残さ。しかし、下腹深く刺した刃に諸手をかけ、足を踏ん張り、歯を食いしばりながら耐えているのです。
「も、もはや梨江も……力尽き……て、い、いざ、お、女の切腹か、かかる最期ッ!」
刃を深々と突き入れ「ぐっ!うッ……うーッと」悲痛なうめきと共にえぐります。ああ、ついに梨江も動脈を切ったのでしょう。ずるずるとひざをつき、前に倒れ込みます。
こうしてはなばなくしも壮絶な二人の切腹は幕をおろしたのでする。
血の海にこと切れて横たわる二人の女性を見下ろす一同は、あまりの衝撃にただもう呆然と声もないありさまでした。
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