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声優名 常盤はなこ  [ 声優詳細情報 ]
価格 902円 文字数 3290文字
サイズ 119352.2 KB 公開日 2021年9月5日
声のタイプ おっとり系のお姉さん ファイル形式 zip
売れ行き
 この作品の販売回数 : 1回
作品内容  江戸時代中期、女人の身で切腹したとされる溝口与之を元とした『創作 与之女切腹後日譚』という作品の朗読音声です。

台詞
与之女切腹後日譚

女人の身で切腹した例は数多くあると思われるが、史上に文献として記載されて残っているのは僅かである。その一つの大和柳本藩に於ける溝口与之の切腹は、その事情と、女の身で自ら望んで切腹、それも見事な十文腹を切った事で、今日の我々にも深い感興をそそられるものがある。
ところで、この事件のいわば事の発端者である藩主信方の奥方のその後については何もわからない。事が事だけに当然ではあるが、このままでは女ながら目覚ましい切腹を遂げた与之女が不憫である。身分こそ違え同じ女としてみれば、つまりは夫を奪われた上、その夫を吾が手にかてけ殺し、その身は切腹して果てる、これでは女人切腹の勇名は残っても、与之としては浮かばれまい。いくら夫七郎右衛門が美男であっても家臣の身で殿の正室たる奥方に挑む事は考えられず、奥方の方から誘い水をかけたことに違いない。信方が駿河城在番で留守。その間、閨の寂しさに耐えかねての事ではあろうが、懐妊までして水子を流すまでとは些か行き過ぎであろう。もちろん七郎右衛門とて一応は身分を考え辞退したろうが、是非にとあればこれも主命、拒みきれず、そのうち枕を交わす事が重なればそこは主従とはいえ男女の伸。掟を破り不義を承知の密会は、かえって二人の情熱を燃え立たせたやも知れぬ。また、与之女が武家の女として閨のうちで余りに慎み深く、七郎右衛門の男を満足させなかったこと等があったのかも知れぬ。とにかく睦みの心地よさにともに身分を忘れて男女の営みに励むことになったのも無理からぬ次第。しかし不義はお家の重き法度。
七郎右衛門が己が妻の手にかかり最後を遂げたはやむなきことであり、例え与之の手にかからずとも何れは死罪、切腹となることは十分考えられることである。となれば、残る奥方や二人を取り持ったであろう奥向きの者達が不問のままに終っては不公平と言う者である。表には出ずとも何等かの始末はあったのではなかろうか。兎も角女人切腹の名を後世に残しわれわれに大いなる感興を持たせてくれた与之女のために、敢えて思いを巡らしてみることにした。
駿河城在番の役目を終えて江戸に戻った織田信方は、溝口与之が武士も及ばぬ見事な十文字切腹を遂げたこと、そしてその切腹の有様を子細に聴き感服するとともに、極秘裡に奥方の不義密通の事を調べました。その結果、不義密通は紛れもなき事実であり、しかも懐妊のうえ秘かに水子にしたこと。また、奥方密通のことを秘するためこれにかかわった侍女三人と老女船岡達が家中の待つと密通するのを黙認していたことなどが判明しました。信方は家中の乱れに心を痛め、一万石の小藩ながら織田信長の縁に連なる名家の誉と、公儀への慮りに苦汁をのむ思い出、侍女は打ち首に替え自害を、そして奥方と船岡には与之に倣い切腹自害を申し付けました。そしてまた切腹の作法も昔戦乱の時代に落城の砌乱入する敵の雑兵らから女房たちや侍女たちが身を汚されるのを防ぐために取った、女腹によることを命じました。たとえ自害して果てた身でも女に飢えた雑兵は容赦なく息絶えた女体を犯すのが習いです。さればそれを防ぐ女腹とは武士並に切腹し(切腹が故実作法となった徳川中期後とは異なり、臓腑が喰みでるまで切るのが戦乱の当時は当然のことでした)臓腑を出したうえ女の秘所を子壺まで深く貫きえぐって果てる事です。腹を深く断ち割り腹綿を溢れさしたうえに秘所を貫いた亡骸にはさすがに手を出すことはありません。信方は奥方の不義を怒り、腹を切らすのみか女のしるしを貫かせて申し訳させるつもりと思われました。無論表向きには奥方は船岡や侍女達と武芸の稽古に励んでいるうち誤って怪我をし急死、船岡以下はその申し訳に自害、ということに取り繕うことにしました。
 船岡以下は与之が切腹した時、何れはお咎めは覚悟していましたが、万一場合でも奥方の取りなしがあるものと思っていたこともあり目付け役より申し渡しを受けると面が蒼ざめまた。戦国乱世は既に遠く、天下太平のこの頃、武士の切腹とて稀なこと。それも真に腹を切る事なく、腹切り刀を手にとる刹那、首を切り落とす、つまりは切腹とは名のみの実は打首同様が習いの当節です。甚だしいときは、腹切り刀も真刀ではなく木刀、更には扇子腹とて三方に扇子を載せ、これに手を伸ばすとき介錯人が首を斬る始末です。それでも、見事に切腹といわれるのです。それが女の身で切腹。まして真に腹を切ったうえ秘所を貫くなとらとは、思うだけで気を失いそうになります。然しやはり武家の女。「重き仕置仰せ付けらるべきところ、自害お許し賜りありがたく存じまする」「切腹の儀、有り難くお受け仕りまする」と覚悟を決めて応えました。しかし奥方は死罪、それも女腹の切腹と聞いて気を失いかけ、「大名の正室に切腹とは余りな為されよう」と怒り哭げきましたが、信方は「昔なれば手打ちにもなるべきもの。与之が切腹致したとき、己が所行を恥じて自害致すが武門にあるものとして心得の筈。今日まて生き恥さらすは心得違いも甚だしい。家臣の妻が見事腹切って見せたのも、主たる身の不始末を諫める心もありしと思わるる。不始末の詫びに家臣の女に劣らぬ切腹遂げてこそ大名の正室じゃ。申し訳に見事切腹って見せい。微禄の家臣の女に遅れをとってなるまいぞ」ときつい答えです。大名ともなれば下じもの者のように簡単に離縁もできません。「かくかくの訳にて離縁」とて不義のことが知れれば、実家の方とて「左様な不心得者はお手討ちになされて苦しうございませぬ」と挨拶せねばならず、仮に引き取っても縁家への手前そのままにはできず、やはり自害させるか、尼寺へでもやるほかありません。太平になれた世とはいえやはり武家の掟として厳しいところです。呆然としている奥方に、奥方の嫁入りに実家より付添い婚家の奥向きで威勢をふるっていた船岡も「この上は見事にお腹を召され、汚名をそそがれるが肝要かと存じまする。恐れながらこの船岡の切腹に倣われて、お腹を遊ばされませ」と決意を促します。「いやじゃ。この身を独りに長のお留守。つれない殿のせい故の出来事。腹など切りとうはない。郷へ戻ろう。のう船岡」「何を仰せられます。さようなことが叶う道理はございませぬ。よし、お戻りなされたとて、父君、母君がそのままになされよう筈はございませぬ。信方様への義理にも直ちにお手討ちにいされるは必定。いえ、其れ処か母君には、娘の不始末はわが身の至らぬゆえ、とて御生害に及ばれるやも」「そのようなーーー」「確かに独り寝の淋しさ、それを思うてついきつうお止めせなんだこの船岡の至らなさの落度。お詫びのいたしようもありませぬ。されどこうなってはお覚悟のほど、何卒願はしう存じます。わが夫を手にかけたうえ、切腹なされた七郎右衛門さまのご妻女のお心のうちを思わせられませ」「とはいえ女の弱手で腹が切れようか」と奥方は止む無く心を決めたようですが、不安を隠せません。「なんの、女子はいざとなれば殿方より苦痛に耐える力のあるものでございます。万一お力及ばぬ時は、船岡が介添申し上げますればお心易ういたされませ」と励まします。
自害の場は下屋敷の奥座敷とし、介添には特に選ばれた侍女が当り、総て女手で取り仕切る手筈。検視役も次席老女の鈴村が勤めることとし、さりげなく奥方、船岡以下数名の侍女が武芸鍛錬のためと称して下屋敷に入りわざと数日長刀、小太刀の稽古などして過ごし家中の目を逸らしました。
内密のこととて特に改まった場は設けず、下屋敷での普段の奥方の部屋で奥方と船岡が、次の間で侍女がそれぞれ自害することにしました。殊更な場に代わりただ白布団が伸べられその上で自害を遂げ、亡骸はそれに包まれて用意の棺に入れられることになっています。
いてよいよ当日となり、一同は白無垢に着替え夫々の席に付き、鈴村が末席に控えます。
「それでは刻限なれば、殿の仰せに従われ潔う致されませ。お方さまにも恐れながら宜しく覚悟のほど願はしう存じまする」と自害を促しました。


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